将棋の対局は、序盤・中盤とどれだけ良い形を作れても、最後に相手の玉を詰ませられなければ勝てません。詰将棋は、その「玉を詰ませる力」だけを取り出して鍛えられる一人用のパズルです。盤面全体を考える対局と違い、手順は必ず「王手の連続」で進み、答えも一つに決まっているので、繰り返すほど終盤の読みの筋肉がついていきます。
なかでも「3手詰」は、詰将棋が得意になれるかどうかの分水嶺だと言われています。1手詰は「王手をかければそれだけで詰む」単純な形ですが、3手詰からは「自分が王手をかける → 相手が逃げる(または取る) → 自分が仕留める」という、実戦の終盤そのままの読みの型が必要になります。この記事では、3手詰を解くための考え方と、覚えておくと役立つ詰みの手筋を紹介します。
詰将棋の基本ルール
3手詰の考え方に入る前に、詰将棋特有のルールを確認しておきましょう。
- すべての手で王手をかける:詰将棋では、自分(王手をかける側)はどの手でも必ず相手の玉に王手をかけ続けます。王手にならない手は、そもそも正解の手順から外れています。
- 玉方は最善の逃げ方をする:王手をされた側は、詰みを免れる可能性が一番高い応手を選びます。「わざと悪い手で捕まる」ことはないという前提で読むのがポイントです。
- 持ち駒も使える:盤の外にある持ち駒を空いているマスに打つ手も、通常の駒移動と同じように王手の手段になります。
- 打ち歩詰めは反則:歩を打つ一手で直接詰ませることはできません。歩で王手をかけて相手に応手させ、別の駒で仕留める必要があります。
3手詰の考え方 ―「自分→相手→自分」の型
3手詰は名前の通り3手で構成されています。1手目が自分の王手、2手目が相手の最善の応手、3手目が自分の詰みの一手です。闇雲に手を探すのではなく、次の順番で絞り込むと格段に読みやすくなります。
- 初手候補を洗い出す:盤面から「王手になる手」をすべて挙げます。動かせる駒の候補だけでなく、持ち駒を打つ手も忘れずに数えましょう。多くの局面では、王手になる手は2~4通りほどに絞られます。
- 相手の応手をすべて確認する:候補の一手ごとに、相手の玉が逃げられるマス・王手の駒を取れるかどうか・合い駒(王手を防ぐために別の駒を間に打つこと)ができるかどうかを一つずつ数えます。応手が一つでも見つかったら、次にその応手に対する3手目が本当に詰みになっているか確認します。
- 詰みを確認する:3手目を指した後、玉にまだ逃げ道が残っていないか、取られてしまう手ではないかを最終チェックします。逃げ道が一つでも残っていれば、それは詰みではなく「王手」で終わっているだけです。
この「候補を挙げる → 応手を数える → 詰みを確認する」という順番そのものが、実戦の終盤で相手を追い詰めるときの思考プロセスと同じです。3手詰を繰り返すことは、この型を体に覚え込ませる練習になります。
頻出の詰み手筋3つ
3手詰・5手詰で繰り返し登場する基本形を3つ紹介します。いずれも盤の隅を使った小さな図で示していますので、駒の効きを一つずつ目で追ってみてください。
1. 頭金(あたまきん)
玉が盤の端に追い込まれているとき、玉の真正面(頭の位置)に金を打つと、金の効きだけで詰んでしまう形です。金は前・斜め前・横に効くため、端に逃げ場のない玉の逃げ道をまとめてふさぐことができます。
打つ前の持ち駒: 金
▲1二金まで
この図では、金が1二に打たれることで玉(1一)は前に進めず、横の2一・斜めの2二も金の効きでふさがれています。玉が金を取ろうとしても、後ろの歩(1三)が金を守っているため取れません。逃げる場所も取る手も無いので詰みです。
2. 退路封鎖
自分の王手だけでは玉の逃げ道を一つふさぎきれない場合、相手自身の駒がもう一つの逃げ道をふさいでくれている形を見逃さないことが大切です。
打つ前の持ち駒: 銀
▲2二銀まで
銀(2二)は斜め前で玉(1一)に王手をかけ、同時に前方の2一もふさいでいます。残る1二は相手自身の桂がすでに占めているため玉は動けません。銀を取ろうとしても、後ろの歩(2三)が銀を守っているので取れません。このように、相手の駒の配置そのものが逃げ道封鎖の役割を果たしているケースは多く、見落としがちなので注意しましょう。
3. 捨て駒
一見「取られて損」に見える駒をあえて打ち、相手に取らせることで詰みの形を作る手筋です。取った駒が玉の逃げ道をふさいでくれる形が代表例で、これは3手詰の定番になっています。
次の図は着手前の問題図です。盤の隅だけを切り出しているので、図の外のマスはすべて空きマスとして読んでください。玉方の持ち駒は、盤上と自分の持ち駒に使われていない駒すべてと考えます(図の読み方は1手詰の記事にまとめています)。
持ち駒: 飛、銀
▲1二飛打 △同銀 ▲2二銀まで
まず1二に飛車を打って王手をかけます。1二は3二の飛車が横から守っているので玉では取れず、取れるのは2一の銀だけです(△同銀)。銀が1二へ移ったところで、玉から見て斜め下の2二に銀を打ちます。玉(1一)から見ると、横の2一は打った銀の利きに押さえられ、真下の1二は取りに来た銀自身でふさがっています。2二の銀も3二の飛車が守っているので取れません。これで詰みです。
では、最初から2二に銀を打つとどうなるでしょうか。これも王手ですが、玉は1二へ逃げてしまいます。2二に自分の駒を置くと、3二の飛車から1二への利きがその駒でさえぎられてしまうからです(2一の銀に2二の銀を取られる手も残ります)。飛車を捨てて相手の銀を1二へ呼ぶ一手だけが、この逃げ道をふさぐ方法になっています。「取らせてから詰ます」という発想を持てるようになると、読みの幅が大きく広がります。
解けないときのチェックリスト
3手詰で手が止まったときは、次の項目を順に確認してみてください。
- 逃げ道の数え忘れ:玉の周りのマスを一つずつ指で数えましたか。盤の端や隅では逃げ道が少なくなりますが、逆に盤の中央では思ったより多くの逃げ道が残っていることがあります。
- 合い駒を忘れていないか:飛車や角のような遠くから利く駒での王手は、途中に別の駒を打たれて王手を防がれる(合い駒)ことがあります。合い駒をされた後もまだ詰むかどうかを確認しましょう。
- 持ち駒の打ち場所:持ち駒はどのマスにも打てるわけではありません(歩は二歩や打ち歩詰めに注意)。打つ場所を一つ変えるだけで、詰むはずの手順が詰まなくなることがあります。
- 王手を継続できているか:候補の手が本当に王手になっているか、指す前にもう一度確認しましょう。王手でない手は詰将棋の正解にはなりません。
毎日の練習メニュー
詰将棋は量をこなすほど、初手の見え方が速くなっていきます。3手詰に入ったら、スピードよりも「候補を数え切る」ことを優先して、時間をかけてじっくり読み切りましょう。無理に難しい問題へ進む必要はありません。同じレベルの問題を繰り返し解いて、パターンを体に馴染ませることも立派な練習です。
1日何問解くか、どうなったら手数を上げるかといった続け方は詰将棋を毎日1問続ける練習法にまとめています。
脳タイムの詰将棋で練習する
脳タイムの詰将棋は、1手詰の易しい問題から長手数の難問まで、Lv1からLv50まで段階的に出題されます。盤上の駒をタップして移動できるマスを確認しながら、持ち駒はチップから選んで打つシンプルな操作で、スマートフォンからすぐに練習を始められます。今回紹介した「頭金」「退路封鎖」「捨て駒」の形も、実際に手を動かしながら確認してみると理解が深まります。



