チェスは、将棋と同じく2人で盤を挟んで戦う対戦型のボードゲームです。将棋の駒は「歩」「香車」「桂馬」「銀」「金」「角」「飛車」「王」の8種類ですが、チェスは「ポーン」「ナイト」「ビショップ」「ルーク」「クイーン」「キング」の6種類だけ。駒の種類が少なく動き方の規則も単純なので、覚える負担は将棋より軽く感じられるはずです。
とはいえ実際に対局相手を探すのは気が引けるものです。知り合いに手加減してもらうのも申し訳ないですし、オンラインで知らない人と対戦するのは緊張します。そんなときに向いているのがAI対戦です。AIが相手なら何度負けても誰にも迷惑をかけません。このガイドでは、駒の動きから序盤の考え方、初心者がつまずきやすい失敗、AIの強さの選び方まで順番に説明します。
最初に覚えること
チェスの駒は6種類で、それぞれ動き方が決まっています。
- ポーン: 基本は前に1マスだけ進みます。最初の一手に限り2マス進むこともできます。斜め前に敵の駒があるときだけ、その駒を取ることができます。
- ナイト: アルファベットの「L」の形に跳びます。他の駒を飛び越えて移動できる唯一の駒です。
- ビショップ: 斜め方向にだけ、好きなマス数だけ進めます。
- ルーク: 縦横方向にだけ、好きなマス数だけ進めます。
- クイーン: 縦・横・斜めのすべての方向に、好きなマス数だけ進めます。もっとも強い駒です。
- キング: 縦・横・斜めに1マスだけ進めます。キングは実際に取られることはなく、どこにも逃れられない王手(これをチェックメイトと呼びます)を受けた時点で負けになるので、常に安全を優先して動かします。
基本の動きに加えて、3つの特殊ルールがあります。
- キャスリング: キングとルークが一度も動いていない状態で、間に他の駒がなく、キング自身が現在チェックされておらず、キングが移動する経路や到着マスも敵の駒から狙われていないとき、キングをルーク側へ2マス動かし、キングが通過したマスにそのルークを移す特殊な一手です。キングの安全を確保しながらルークを盤の中央に近づけられる、序盤の重要な動きです。
- アンパッサン: 敵のポーンが最初の一手で2マス進み、あたかも自分のポーンの真横を通り過ぎたとき、その直後の自分の一手に限り、自分のポーンがそのポーンを斜め後ろから取れる特殊ルールです。1手でも見送ると権利は消えます。
- プロモーション(成り): ポーンが盤の一番奥の段まで到達すると、クイーン・ルーク・ビショップ・ナイトのいずれかに変身します。将棋の「成り」に近い発想ですが、チェスでは基本的にクイーンへの成りを選びます。
脳タイムのチェスでは、これらの特殊ルールは条件が揃うと自動で発生する仕組みになっているので、細かい手続きを覚えなくても実戦の中で自然に体験できます。
初心者が守るべき序盤の3原則
序盤でやることを整理すると、次の3つの原則に落ち着きます。
1. 中央支配: 盤の中央4マス付近を早めに押さえることです。悪い例は盤の端のポーンから動かすこと。中央を敵に押さえられ、自分の駒の動ける範囲が狭くなります。良い例は序盤にまず中央のポーンを1〜2歩進めること。中央を押さえるほど他の駒が奥から外へ出やすくなります。
2. マイナーピース展開: ナイトとビショップ(まとめて「マイナーピース」と呼びます)を早めに盤の奥から出すことです。悪い例はポーンばかり動かして初期位置に置き続けること。良い例は中央のポーンを動かした直後にナイトやビショップを外へ展開し、盤全体に利きを広げることです。
3. 早期キャスリング: キングの安全を早めに確保することです。悪い例はキングを中央に残したまま他の駒ばかり動かすこと。相手のクイーンやルークに一直線に狙われます。良い例は周りのポーンやナイトの動きが整った段階で早めにキャスリングを行い、キングを盤の隅に囲うことです。
この3つを序盤の合言葉として覚えておくと、対局の入り方が安定していきます。
初心者がやりがちな失敗5つ
- クイーンの早出し: もっとも強い駒だからと序盤から前に出したくなりますが、他の駒の援護がない状態で出すと相手の安い駒に追い立てられ、逃げ回るだけで手数を消費します。
- 同じ駒を何度も動かす: 1つの駒をあちこち動かしている間に、他の駒は初期位置のままです。展開が遅れ、相手だけが盤全体を使える状態になります。
- ポーン構造の軽視: ポーンは価値が低い駒ですが、並び方が乱れると駒の通り道や守りの形が崩れます。何となく動かすのではなく、中央支配とキングの守りにつながる一手かどうかを意識しましょう。
- 相手の狙いを見ない: 自分の攻めばかり考えて相手の駒の狙いを確認しないと、思わぬ一手で駒を取られます。自分の番になったら相手の直前の一手が何を狙っているかを確認する習慣をつけましょう。
- 駒の価値を無視した交換: 価値の高い駒と価値の低い駒を安易に交換してしまうミスです。取る・取られる場面では、交換後に損得がどちらに出るかを一度立ち止まって考える癖をつけると大きな失点を防げます。
AI対戦のレベル選びと上達ステップ
脳タイムのチェスは、AIの強さをLv1からLv50までの50段階から選べます。ただし強さは一定の割合では上がりません。レベルで変わるのは「何手先まで読むか」「読まずに指す確率」「駒の位置を見るかどうか」「1手にかける時間」の4つで、前の3つは特定のレベルで段になって切り替わります。段の位置を先に知っておくと、どこで止めてどこまで上げるかを決めやすくなります。
変化1: 読みの深さは5段階
AIが何手先まで読むかは、レベルに比例して増えるのではなく、次の5つの帯に分かれています。ここでいう手数は読みの本線の長さです。本線を読み終えたあとも駒の取り合いが続くかぎりは読みを延長するので、取り合いが続く局面では表の手数より深く読まれます。
- Lv1〜Lv5: 本線を1手先まで読む
- Lv6〜Lv15: 本線を2手先まで読む
- Lv16〜Lv30: 本線を3手先まで読む
- Lv31〜Lv45: 本線を4手先まで読む
- Lv46〜Lv50: 本線を5手先まで読む
段の位置はLv6、Lv16、Lv31、Lv46の4か所です。同じ帯の中では読む手数が変わらないので、Lv16とLv30は読みの深さが同じです。強くなったと感じにくいまま数を上げるより、段をまたぐ手前で勝率を安定させてから越えるほうが手応えが分かります。
変化2: Lv15までは「読まずに指す手番」が混ざる
低いレベルのAIは、読みを浅くするだけでなく一定の確率で読みを飛ばし、指せる手から無作為に1つ選びます。この確率はレベルが上がるにつれて下がり、Lv16でちょうど0になります。
- Lv1: 50%
- Lv8: 27.5%
- Lv15: 5%
- Lv16以上: 0%(必ず読んでから指す)
つまりLv1のAIは、およそ50%の手番を考えずに指しています。序盤で自分が悪くしても相手が勝手に緩む可能性が高い帯なので、勝敗より駒の動かし方の確認に向いています。逆にLv16以上では取りこぼしが無くなるので、こちらのミスがそのまま結果に出ます。
変化3: Lv16から駒の位置も見はじめる
Lv15以下のAIが数えているのは盤上に残っている駒の点数の合計だけです。同じ点数なら、駒が中央に居ても隅で眠っていても評価は変わりません。Lv16からは中央に近い駒を高く評価する項が加わるので、中央を明け渡すと点差が付き、序盤の展開で押し返されるようになります。
この記事の「中央を早めに押さえる」は、Lv16以上ではAIの評価そのものに効いてきます。中央支配の効果を実感したいなら、この段をまたいでから同じ指し方を試すと違いが分かります。
変化4: 1手にかける時間は1秒から12秒まで
AIが1手に使う時間の上限は、Lv1の1秒からLv50の12秒まで、レベルに比例して伸びます。段ではなく連続で変わるのはこの1つだけです。高いレベルほど相手の考慮時間が長くなるので、じっくり指したいときは上の帯、テンポよく指したいときは下の帯を選ぶ、という決め方もできます。
どこから始めて、どこまで上げるか
上の段に合わせると、上達のステップは次のように置けます。段の途中で止めても強さは変わらないので、目安が満たせたら次の段まで一気に上げてしまって構いません。
- Lv1〜Lv5(無料): 駒の動きと特殊ルールが発生する様子を体で覚える段階。読みは1手先だけで、しかもLv1では50%の手番を考えずに指してきます(この確率は帯の中でも下がり続けます)。目安は、駒の動きに迷わず、特殊ルールが起きても慌てなくなったら次へ。
- Lv6〜Lv15: 序盤の3原則を実戦で再現する段階。無作為に指す確率がLv15に向けて5%まで減っていくので、こちらのミスが結果に出はじめます。目安は、序盤に駒をタダで取られることが減り、3原則を意識せず指せるようになったら次へ。
- Lv16〜Lv30: 相手の狙いを読み、駒の交換の損得を判断する段階。ここから無作為な手が無くなり、中央の評価も入ります。目安は、取る・取られる局面で損得を考える癖がつき、クイーンを危険なマスに進めることが減ったら次へ。
- Lv31〜Lv45: ポーン構造を意識した中盤の組み立てと、チェックの受け方を安定させる段階。目安は、チェックをかけられたときに「逃げる・間にコマを置く・取る」の3通りを盤面から自分で数えられるようになり、続けて勝てる回数が増えたら次へ。
- Lv46〜Lv50: 本線を5手先まで読む最上位帯です。これまでの原則を保ったまま終盤まで読みを持続させる段階として、実力をじっくり試すのに使えます。
開放の条件と読みの段は、そろっている境目とそうでない境目があります。無料で遊べるのはLv5までで、ここは読みの段の切り替わり(Lv6)と同じ位置です。一方ポイントで開放するLv41は段の途中(Lv31〜Lv45の帯の中)なので、開放したからといってそこで読みが深くなるわけではありません。開放の条件は下の「脳タイムのチェスで練習する」にまとめてあります。
将棋経験者向けのワンポイント
将棋からチェスに入ると、いくつかの発想の転換が必要になります。
まず、取った駒は使えません。将棋では相手から取った駒を「持ち駒」として自分の戦力に加えられますが、チェスでは取った駒は盤から取り除かれるだけです。盤上の駒だけで戦い続ける感覚に切り替えましょう。
次に、引き分けが多いという点です。将棋にも千日手はありますが、チェスでは終盤にどちらのキングも詰められない形になり、引き分け(ドロー)で終わる対局が将棋よりずっと頻繁にあります。負けなかったことも一つの結果として受け止めましょう。
最後に、「玉の囲い」から「キングの安全」への発想転換です。将棋では玉を囲いという固定の陣形で守りますが、チェスのキングの安全確保は主にキャスリング1回で完了し、その後はポーンの壁と周囲の駒の配置で守り続けます。囲いを「組む」というより、キングの周りを「空けすぎない」感覚で捉えると理解しやすくなります。
駒の対応関係(飛車=ルークなど)や、将棋には無いステイルメイト・キャスリング・アンパッサンの正確なルールまで踏み込んだ解説は将棋経験者のためのチェス入門にまとめています。
脳タイムのチェスで練習する
脳タイムのチェスは、AIとの1対1対局で、Lv1からLv5までは登録不要のゲストのまま無料で対戦できます。Lv6以降は会員登録をすると開放され、Lv41からLv50はポイントを使って個別に解放できる仕組みになっています。まずはゲストのまま気軽に触れてみて、序盤の原則が体に入ってきたら会員登録でレベルの幅を広げていくのがおすすめです。



