フリーセルで手詰まりになる原因の多くは、実は詰まった瞬間ではなく、最初の数手のうちにできています。動かせる札から順に動かしていくと、気づかないうちに空きセルが埋まり、掘りたい列だけが深くなっていくからです。逆に言えば、序盤の数手をどう組むかを先に決めてしまえば、その後の展開はずっと楽になります。
このガイドでは、実際の配り1つを題材に「最初の一手を打つ前に何を見るか」を順番に整理します。すでに手が止まってしまった局面をどう打開するかはフリーセル攻略|解けない手詰まりを打開するコツと考え方にまとめてあるので、そちらと合わせて読むと前半と後半がつながります。
序盤に読む4つの指標
フリーセルには山札がありません。配られた時点で52枚すべてが場に並んでいて、伏せられた札も、あとから引く札もありません。つまり「運が悪くて見えなかった」という言い訳が成立しない代わりに、最初の一手を打つ前に盤面の情報が100パーセント揃っているという、他のカードゲームにはない性質があります。
序盤にやるべきことは、札を動かすことではなく読むことです。具体的には次の4点を確認します。この4点が決まれば、最初の数手はほぼ自動的に決まります。
- エース4枚がそれぞれ何枚下に埋まっているか:組札はエースからしか始まらないので、エースまでの距離が序盤の作業量そのものになります。
- その上に乗っている札に、場札の受け皿があるか:色違いで1つ大きい札が場札の一番上に出ていれば、空きセルを使わずにどかせます。
- 空きセルを何枠使う予定か:4枠は上限であって予算です。何枠まで使うかを先に決めておかないと、使い切ってから気づくことになります。
- 最初に空にできそうな列はどれか:空き列は空きセルより価値が高いので、序盤の目標地点として狙いを付けておきます。
例題の配り
以下を例題にします。1行が1列で、札は配られた順に左から並べています。左端がその列で最初に配られた札、右端がその列の一番上=今すぐ動かせる札です。画面では札が重なって並ぶので、その列でタップできる1枚が「一番上」の札にあたります。以降「N枚下」は、その列の一番上から数えて何枚奥かを指します(一番上そのものは0枚下)。なおこの配りは解説のために作った例で、脳タイムがこの並びを配るわけではありません。
- 列1: ♦8 ♠8 ♦J ♣J ♣A ♠5 ♦10
- 列2: ♥10 ♣10 ♥A ♦3 ♣8 ♦6 ♠J
- 列3: ♥7 ♣9 ♥4 ♦K ♦9 ♦4 ♠4
- 列4: ♦A ♥2 ♠2 ♠6 ♣4 ♥Q ♥6
- 列5: ♦2 ♠Q ♣K ♠9 ♣Q ♣2
- 列6: ♦7 ♣5 ♠K ♠7 ♣6 ♣7
- 列7: ♠3 ♥3 ♦Q ♣3 ♠A ♦5
- 列8: ♥8 ♠10 ♥5 ♥K ♥9 ♥J
まず各列の一番上の札を並べると♦10・♠J・♠4・♥6・♣2・♣7・♦5・♥Jです。エースは1枚も出ていないので、どの列かを掘らないと組札は始まりません。
エース4枚の深さ
4枚のエースの位置を数えると、次のようにきれいに散らばっています。
- ♠A:列7の1枚下(♦5のすぐ下)
- ♣A:列1の2枚下(♦10・♠5の下)
- ♥A:列2の4枚下
- ♦A:列4の6枚下(その列で最初に配られた札)
この数字を見た時点で、♦Aは序盤の対象外だと決められます。6枚どかすには空きセル4枠を全部使ってもまだ足りず、序盤にやろうとすれば確実に身動きが取れなくなります。♥Aも4枚下なので後回しです。序盤で狙うのは♠Aと♣Aの2枚に絞ります。
掘る列の決め手は「深さ」より「受け皿の有無」
ここが序盤設計の中心です。深さだけを見れば♠A(1枚下)のほうが♣A(2枚下)より近く見えます。ところがかかるコストは逆になります。
♠Aを掘る場合:上に乗っているのは♦5の1枚だけです。♦5を場札へ移すには黒の6(♠6か♣6)が場札の一番上に出ている必要がありますが、♠6は列4の3枚下、♣6は列6で♣7の下に隠れています。つまり受け皿がないので空きセルを1枠使うしかありません。しかも♦5は黒の6が出てくるまでその枠に居座り続けます。
♣Aを掘る場合:上に乗っているのは♦10と♠5の2枚です。♦10(赤)は黒のJに置けて、列2の一番上がちょうど♠Jです。♠5(黒)は赤の6に置けて、列4の一番上がちょうど♥6です。どちらも場札に受け皿があるので、空きセルを1枠も使わずに♣Aまで届きます。
さらに♣Aを先に取ると連鎖が起きます。列5の一番上が♣2、列7では♠Aのすぐ下が♣3で、列4を掘る途中で♣4も出てきます。♣の組札が4まで一気に伸びる形です。一方♠Aを先に取っても、♠2は列4の4枚下なので次が続きません。「深さ」「受け皿」「その先の連鎖」の3つを並べて比べるのが、掘る列の選び方です。
ただし受け皿を使うと代償もあります。♦10を♠Jの上に置いた時点で、列2の♥Aは4枚下から5枚下へ1枚遠のきます。序盤で後回しにすると決めた列を受け皿にするなら問題ありませんが、「受け皿にした列は掘る列ではなくなる」ことは意識しておきます。
序盤12手の具体例
ここまでの方針をそのまま手順にすると、次の12手になります。すべて1枚ずつの移動なので、連なった札をまとめて動かす操作を使わなくても再現できます。
- ♦10を列2の♠Jの上へ
- ♠5を列4の♥6の上へ
- ♣Aを組札へ
- ♣2を組札へ
- ♦5を空きセルへ(1枠目)
- ♠Aを組札へ
- ♣3を組札へ
- ♠5を空きセルへ(2枠目・一時退避)
- ♥6を列6の♣7の上へ
- ♠5を♥6の上へ戻す(2枠目が空く)
- ♥Qを空きセルへ(2枠目)
- ♣4を組札へ
12手を終えた時点で、組札には♠Aと♣A・♣2・♣3・♣4の5枚が乗り、空きセルは♦5と♥Qの2枠を使っています。列4は4枚まで減り、序盤の対象外にしていた♦Aも6枚下から3枚下まで近づきました。読む順番を変えただけで、これだけ進みます。
8手目から10手目の3手は、♥6と♠5の2枚組を列6へ移すための操作です。♠5をいったん空きセルへ預け、♥6を♣7の上へ置いてから♠5を戻します。まとめて動かす操作は、内側では必ずこの「空きセルを経由した1枚ずつの移動」に分解されます。
まとめて動かせる枚数の計算
連なった札を何枚まとめて動かせるかは気分では決まりません。上限は(空きセルの数 + 1)× 2の(空き列の数)乗です。空きセルは1枠増えるごとに1枚ずつ足し算で増えるだけですが、空き列は1本増えるごとに枚数が2倍になります。
例題の開始時は空きセル4枠・空き列0本なので、(4 + 1)× 1 = 5枚が上限です。この5枚という数字は、序盤にどこまで大きな塊を動かせるかの目安になります。なお移動先が空き列そのものである場合、その列は移動の作業場に使えないため、空き列の数から1本を引いて計算します。
空き列1本は空きセル1枠より価値が高いという結論はここから出てきます。序盤の目標を「空きセルを残す」ではなく「1本でも列を空にする」に置くのは、この掛け算のためです。
12手目のあとの分かれ道
12手目を終えた局面で、列4は♦A・♥2・♠2・♠6の4枚です。ここには方針の異なる2つの続きがあり、どちらを選ぶかで残りの展開が変わります。
分岐 A:空きセルを回復する
- ♦5を列4の♠6の上へ戻す
♠6が出たので、5手目からセルに居座っていた♦5をようやく場札へ戻せます。使用中の空きセルは2枠から1枠に減り、身動きの自由度が戻ります。ただし♦5を♠6の上に置いた分、その下の♠2は2枚下へ後退します。
分岐 B:列4を空にして♦Aまで取りに行く
- ♠6を空きセルへ(3枠目)
- ♠2を組札へ
- ♥2を空きセルへ(4枠目)
- ♦Aを組札へ
♠6と♥2を空きセルへ預けて♠2と♦Aを回収すると、列4が完全に空になります。空き列1本と組札2枚分の前進を得られる代わりに、空きセルは4枠すべて埋まります。この状態でまとめて動かせる枚数は(0 + 1)× 2 = 2枚まで、移動先が空き列そのものなら1枚だけです。
分岐 B は前進が大きい一方、次の数手を読み切れていないと動けなくなります。空き列に何を置くかまで決まっているなら B、まだ迷っているなら A が安全です。ここが「序盤の設計」の終わりで、以降は手詰まりの打開の考え方の領域に入ります。
動かす前に決めておく3つのこと
配りが変わっても手順の作り方は同じです。最初の一手の前に、次の3つを言葉にしておきましょう。
- 最初に掘る列を1つだけ決める:候補は「エースまでが浅い」かつ「上の札に場札の受け皿がある」列です。両方を満たす列が無ければ、受け皿がある側を選びます。
- 空きセルの予算を先に決める:序盤は2枠までに抑えるのが目安です。戻し先の見えない札を預けるときは、その札が何が出るまで居座るのかを口に出して確認します。
- 最初に空にする列を決める:枚数が少なく、下の方に組札へ送れる小さい札が並んでいる列が候補です。例題では列4がそれにあたります。
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脳タイムのフリーセルで実践する
脳タイムのフリーセルはレベル1から10まで選べて、レベル1から5は登録なしのゲストのままで遊べます。レベル6から8はテオワンIDでログインすると開放され、レベル9と10はためたポイントで開放できます。「戻す」ボタンで直前の一手をやり直せるので、序盤の2通りの掘り方を実際に試して比べる練習にも向いています。上の例題と同じ配りが出てくるわけではありませんが、エースの深さと受け皿を数えてから最初の一手を決める手順は、どの配りでもそのまま使えます。



